木原東子全短歌 続

二〇〇〇年より哀歌集を書く傍ら、二〇〇六年より「国民文学」歌人御供平佶に師事、二〇一一年からは歌人久々湊盈子にも薫陶を受けて、個性的かつ洗練された歌風を目指して作歌するものの、やがて国外に逃れることとなる。 隠身(かくりみ)の大存在の謎を追求する歌風へと変転し、「・・・」とうそぶく。カッコに入れる言葉の発見は難しい。

ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(8)『75歳の秋彼岸まで』~~ 「人間社会にて」「自然の一日」「地球市民の為事」


IMG_4255


  「人間社会にて」
 
世に許容されたる者のふりをしてドイツのカフェに朝食を摂る

幾重にも世に立つ壁の外側の嫗にバスのストライキある

マスクせる給仕若くて恭し 乳児の瞳無心に見つめ来

勘違い起こしてばかりのこの日々に夢の執筆暮らしせる吾



IMG_4257


「自然の一日」

まつ白のベゴニアの花端然と 色光すべて跳ね返し白
 
生き物のそれぞれの持つ心持ち笑ひて駆け来る犬とふ命

日と雨がありて楽しも雷光は谷に炸裂 ドラマーくづれ 

夕立のドイツにもあり 四十年昔夏の子産みたる誉れ
 
夕立を猛暑の故国に願ふかな 大気に雲に 海に陽に請ふ
 
十時より夜の帳は濃くなりてなほ鳥声のあり 地球に乗りて


 
IMG_4258

 
  「地球市民の為事」

あやふしも 地球救ふと祈りなす吾に触れくるかすみか愛か
 
未知の吾如何にぞ動く おさらばと修羅場を発つ日忘れまじけふ
 
グワングワンと息の如くに打ち寄せて誰よりの愛 地球の汀に
 
ダイヤなる星の住人黄金のかざす手の 影意識に及ぶ
 
法のあり 我ら尊き者なれど制御するべく不遜の意識
 
恩義ある人より不意にLINE来て共に瞑想 地球を磨く

.......... 

ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(7)『75歳の秋彼岸まで』~~「水とPC」「物質世界」「卒婚」


IMG_4203



  「水とPC」

「スイトピー」の変換候補に爆笑す「水とPC」 真顔してのち
 
この甘き匂ひのゆゑの「スイトピー」 てふのキスをす赤に臙脂に
 
空調を効かしたるバス初めてのドイツ人民無言のマスク
 
山間の底の川辺に木に埋もれ月星いづこ七夕を過ぐ
 
囀らず雑音ばかりの二本足 メロディ洩れくるあの窓一つ 
 
産卵か アシナガバチが我が服の木陰模様を幾度も訪ひ来


 
  「物質世界」
 
虚空にも原子の無にも動くあり 物質反物質出でては消えて
 
満洲に生れたる我のドイツにてリスト聴き居る「死の前奏曲」とふ 
 
如何ならむ殺生ならば肉も葉も命の融合赦しくるるか

  
 
  「卒婚」
 
見るに耐えぬ汝れを消したり わが内に主の誇らしき人類一人
 
未だ見ぬ境地に立つや 新月の叡智の手配つまに離(さか)れり 
 
パニックも苦痛哀しみ怒りなし 愛無限にして次元を違ふ
 
哀れなる夫(つま)ともあらずただ無用 近くて遠し新たに出逢はん
 
愛の記憶夫の脳より消えしとか ハプニング続く中の傑作

IMG_4202


........ 

ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(6)『74歳の夏至まで』~~ 「卯の花の匂う垣根に」「光を水にて」 「エフ分の一」

IMG_3614

IMG_3618


  「卯の花の匂う垣根に」
 
日常の整ひつつに心身のこの沸き出づる焦燥に耐ゆ
 
卯の花の歌の漏れくる水無月のなづきにビタミンBなど如何
 
エイリアンを一匹飼育 それ以外天が下なるボヘミアン歌人
 
我こそがエイリアンにて透明に在れど欠けたるひとつも想はず
 
排ガスの風に揺れゐる花や実のうつくしきやう植ゑし人あり


 
  「光を水にて」 
 
白皙の永遠に褪せざる汝が面輪 多くを母に呉れたるその後
 
聾にして無言の行よりやをら立ち見透かす天然 時空遥かに
 
友の絵の光を水にて薄めたる 人も地球も在るや在らずや
 
陽力にて光放たれ 物在るを見せむと脳内駆けめぐる
 
終日を画面の前に沈思せり わが魂の健やかにして
 
幸ひとこの苦の滴飲み干しぬ われらの道へすがるよすがと
 
楽しくも沈思しをればウインクさる 「極楽鳥のごとく囀れ」

夏至ののち怒りの波はほと消えぬ 意味もなければ忘れすらして
  
 
  「エフ分の一」
 
命去る 残せし骸美しき友の伴侶の啼かずなりたり
 
高枝に瑪瑙と光る桜桃の ジューンベリーならつまみて失敬
 
エフ分の一の揺らぎは楽しからむ オカリナ鳴らし蝋燭灯す
 
誠にや宇宙人かつ愛の人 数の統計吾を定義す

..... 
IMG_5962
 

ギャラリー
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(8)『75歳の秋彼岸まで』~~ 「人間社会にて」「自然の一日」「地球市民の為事」
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(8)『75歳の秋彼岸まで』~~ 「人間社会にて」「自然の一日」「地球市民の為事」
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(8)『75歳の秋彼岸まで』~~ 「人間社会にて」「自然の一日」「地球市民の為事」
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(7)『75歳の秋彼岸まで』~~「水とPC」「物質世界」「卒婚」
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(7)『75歳の秋彼岸まで』~~「水とPC」「物質世界」「卒婚」
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(6)『74歳の夏至まで』~~ 「卯の花の匂う垣根に」「光を水にて」 「エフ分の一」
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(6)『74歳の夏至まで』~~ 「卯の花の匂う垣根に」「光を水にて」 「エフ分の一」
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(6)『74歳の夏至まで』~~ 「卯の花の匂う垣根に」「光を水にて」 「エフ分の一」
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(5)『74歳の夏至まで』~~ 「コロナ周辺」「アップル」「薫香芳香」
最新記事