木原東子全短歌 続

二〇〇〇年より哀歌集を書く傍ら、二〇〇六年より「国民文学」歌人御供平佶に師事、二〇一一年からは歌人久々湊盈子にも薫陶を受けて、個性的かつ洗練された歌風を目指して作歌するものの、やがて国外に逃れることとなる。 隠身(かくりみ)の大存在の謎を追求する歌風へと変転し、「・・・」とうそぶく。カッコに入れる言葉の発見は難しい。

ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(6)『74歳の夏至まで』~~ 「卯の花の匂う垣根に」「光を水にて」 「エフ分の一」

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  「卯の花の匂う垣根に」
 
日常の整ひつつに心身のこの沸き出づる焦燥に耐ゆ
 
卯の花の歌の漏れくる水無月のなづきにビタミンBなど如何
 
エイリアンを一匹飼育 それ以外天が下なるボヘミアン歌人
 
我こそがエイリアンにて透明に在れど欠けたるひとつも想はず
 
排ガスの風に揺れゐる花や実のうつくしきやう植ゑし人あり


 
  「光を水にて」 
 
白皙の永遠に褪せざる汝が面輪 多くを母に呉れたるその後
 
聾にして無言の行よりやをら立ち見透かす天然 時空遥かに
 
友の絵の光を水にて薄めたる 人も地球も在るや在らずや
 
陽力にて光放たれ 物在るを見せむと脳内駆けめぐる
 
終日を画面の前に沈思せり わが魂の健やかにして
 
幸ひとこの苦の滴飲み干しぬ われらの道へすがるよすがと
 
楽しくも沈思しをればウインクさる 「極楽鳥のごとく囀れ」

夏至ののち怒りの波はほと消えぬ 意味もなければ忘れすらして
  
 
  「エフ分の一」
 
命去る 残せし骸美しき友の伴侶の啼かずなりたり
 
高枝に瑪瑙と光る桜桃の ジューンベリーならつまみて失敬
 
エフ分の一の揺らぎは楽しからむ オカリナ鳴らし蝋燭灯す
 
誠にや宇宙人かつ愛の人 数の統計吾を定義す

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ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(5)『74歳の夏至まで』~~ 「コロナ周辺」「アップル」「薫香芳香」

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  「コロナ周辺」
 
片耳の世界となりてはみ出せり やはり帰国か試しに拝む
 
外界ゆついに予約の届きたり 皮膚を摩擦すブラシと石鹸

批判すらまずは感謝に始むればいずれも無傷 最後も謝して

御詠歌のやうなる歌と自嘲して庭にて遊ぶ犬やら鳥やら

潮風を思ひてめぐるザリーネゆ注がれ嬉し飛沫と日差し 

三昧の文筆生活 あらまほしき取材旅行はコロナの阻む


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   「アップル」
 
聖霊のへその不思議の胡麻粒の 皆して創るヴァーチャルリアリティ

知恵の実を喰みしはあの日 世を統べる薄き小箱にりんご明るむ

三次元に見ゆる仕組みの肉眼にiPhoneカメラ 未だとどかぬ

月光よ 枝葉に覆はれたる闇に黄金散乱 あの辺りらし

新緑の森の天井仰ぎつつ友の窮状心を過ぎる

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  「薫香芳香」
 
無風にて 外へ一歩を踏み出して初めて知るも皐月の薫香
 
薫香の元を辿れば 足元の草刈り跡ゆ立ち昇るとは
 
繊細なるニワトコの花群れ咲きて何にも喩へがたき芳香
 
川風にふと香りくる懐かしきこれは何ぞや 菜の花なりぬ
 
白き花ささやかなるがあふれ咲く皐月の小路 日はまだ高し
 
ちさき朱の垂れて野苺さて如何に 前歯ににほふこれぞそれなり

 *
無為ゆゑか疾く過ぎたるに五月なほ最後の幾日長々つづく 

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ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(4)『74歳の夏至まで』~~ 「日常」「コロナ禍と自然」「思い巡らす」

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  「日常」
 
憂きことは電脳界に因のあり 蘭の新芽に気を紛らはす
 
夕まぐれ鳥歌満ちて憂ひすらやがて鎮もる 左の世界に
 
さあどんなご褒美もらお 為すべきを一つ果たせり次があれども
 
囚はれの時を去りしに思はずも蟄居の日々を何故か二人居


 
  「コロナ禍と自然」
 
若葉へと陽の差しきたり ヴィールスの増えて強いらる「足るを知る」かな
 
清浄の早緑色の光満ち 影も輝く無人のこの世
 
山盛りのプレゼントあり コロナ禍へ月は大なり空晴れ渡る


 
  「思い巡らす」
 
エナジーが物質として象(かたど)れるひと葉 一石 命の万華
 
彩なせる生命の園に猫と居て天国想へり 「100Kほどかな?」
 
聖霊と物質粒子のつながりの 温き尊き仕組みに依存す
 
無尽なる隠り身(かくりみ)へ我が問ひあまた 一体なれば瞬時の応へ
 
直線の旅路ここまで 透明なる光の残す色と影かな
 
聖霊の中に微量の粒のあり 斯かる吾かと意識を忘る

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ギャラリー
  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(6)『74歳の夏至まで』~~ 「卯の花の匂う垣根に」「光を水にて」 「エフ分の一」
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  • ドイツに過ぎゆく時なりて 2020年より(5)『74歳の夏至まで』~~ 「コロナ周辺」「アップル」「薫香芳香」
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