「土壇場」
苦と楽のいづれ多かる 古代より地球に生れて死にたる命
理由ありて禍々しくもこの不安 過ちかさね惨めにをふるか
オオポカをやらかしたりと吾子逝けり 瞳清らにその苦見せねど
南天に満月ありて笑ひ合ふ 淡く小さくてけふを許さる
「つましき冬日」
御日笑ふ シニアハウスの硝子より部屋に満ちきて残像みどりに
半世紀着たるセーター つましさの毛皮のごとし動物吾の
頻繁に天使の助けあるに何故腐心して生く 些少の残りを
冬らしき日を喜ぶは懸念ゆゑ 熱によぢらる夏よお前は
真実の世のごとすがし ふんはりと白銀ありて森閑とせり
ドイツ流墨絵あるなり 濃淡の自然の筆に影の世のさま
ゆうゆうとしらとり並び飛び行けば 水鳥大小こころ騒がす
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