木原東子全短歌 続

二〇〇〇年より哀歌集を書く傍ら、二〇〇六年より「国民文学」歌人御供平佶に師事、二〇一一年からは歌人久々湊盈子にも薫陶を受けて、個性的かつ洗練された歌風を目指して作歌するものの、やがて国外に逃れることとなる。 隠身(かくりみ)の大存在の謎を追求する歌風へと変転し、「・・・」とうそぶく。カッコに入れる言葉の発見は難しい。

2011年10月

ちょっと暑すぎる十月尽

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何を書こうと言うわけでもないが、
とりあえず、スタート!

この週末ははじめて孫がパパとお泊まりしてくれた。
その数日前、電話で「モチモチ、オイデ」あるいは「オバアタン」と言うのを聞くことが出来て
嬉しいと言ったらなかった。

*ゆうくんが天使の声で初めてのモチモチオイデ言ってくれたる

*その声の可愛く嬉し夕空になべての憂さを放り捨てなむ

*ゆうくんと言葉で交わす心かも普通なれども婆には奇蹟

これまでは、目の前のことなら身ぶりで示すことが出来たのが、
今や、そこにいない人やものを話題にできるのだ。
寝かせつけるパパはすぐに眠ってしまったというが、
ひとりでお喋りしたり歌ったりしているらしい声がかなり遅くまで聞こえていた。
(もう、孫話ですみません。)


ここしばらく、意欲が湧かず、内向的になっていたが、
思いついて、キューピーコーワゴールドを二粒のんでみた。

しばし、ぼんやり。

することを考えても、いつものように嫌にならない。

それどころが、すっと立ち上がり、
たちまち、太極拳を始めた。
掃除機をかけはじめた。
小さな詩を書くことも出来た。

あ~らら、馬鹿みたい。
鉄分と亜鉛が不足しているらしいのと、ビタミンBを吸収しにくいこと
そんな生化学的な理由が
気分を左右していたのかと思われて。

すると奇妙にもこの月末を機に、
新しい試みへすらすら移行して行く気配も感じた。
何らかの偶然が力強く導いてくれているような。

庭仕事であれ、片付けであれ、人付き合いであれ。
ただ、旅行ができない。紅葉がない。


*心憂くワード開けばひらりとぞイルカの出づる瞳賢し

*言えぬことあれば歌にもできぬゆえ漏らす言の葉じぐざぐ回る

*夜に聞く屋根の雨音安らぎの深き息する柔き夜具うち

寒いやら暑いやら

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今日のお題はソフトクリーム。

ホームに居る母を二晩うちに泊めて、赤児をもつのと似たような手のかかりよう。
とくに、補聴器(シーメンス、高価)を見失った時は全員(といっても3人)色を失った。
もう二度目なのである。議論しつつ家中駆け回る。ここにあるはずない、といいながら。

夫がめずらしくニタニタ、トイレの前で得意顔だ。

指差す所、あるべき場所に(つまりトイレで唯一ものを置くことの出来るペーパーホルダー上の平らな蓋のうえに)あるではないか。
足もとの床ばかり見つめていた私は、めずらしく夫の肩をたたいてあげた。
彼は得意な時は、自分で自分の肩を叩く、という変な行為をするのだ。

で、一件落着。

ところで、十歳頃青森に一年だけ暮らした。父親の転勤にともない鹿児島から、いきなり48時間の蒸気機関車の旅であった。上野駅で一瞬5歳の弟が(この前死んだ)行方不明になり、みんな泡を食った。

そこでの驚愕の日々については、稿を改めるとして(いつ?)突然、青森を去るころの話となる。

日本通運、いわゆるマルツウで荷物は列車で送り出した。最後の夜を旅館でということになった。
子ども達は有頂天である。(どういうわけか、この姉弟には過去を振り返らず、未来を楽しみにするという共通点があった)

近くのレストランで夕食をとったのか、はっきりしないが、どうしてだかソフトクリームというものをみんなで食べていた。父母はどうしてそんな洒落たものを知っていたのだろう。
ともかくその夢にも勝るおいしさといったら。
私と弟は、何ともうひとつ食べたい、などと馬鹿なことを言い出したのである。
すると、おどろいたことに、父がすぐ許した。それどころか締まり屋の母もそれを許した。
子ども達は、もう一度嬉しさを味わった。そのおいさしは言い表わしようがなかった。

それから60年近く時は流れた。

父も弟も亡くなり、今日は念願のソフトクリームをどうしても食べようと決心した。(もちろん60年間食べなかった訳ではない)
母と私と、フジヤ+サーティワンに行ったが、驚いたことに売ってないという。
隣りのパチンコ屋の二階にあるレストランに行けと言われる。
エレベーターはパチンコ屋には普通無い。

母を廊下に残して、くだんのレストランまで行って、ソフトクリームを持って帰れるかときく。
可愛らしいウエイトレスが、すぐ横の窓口を指差し、そこならお持ち帰りできますという。
怪訝に思ったが、店を出てその横の窓口に行く。

するとその可愛らしい娘が顔を出した。(わざわざ数メートル歩かせないでよ、と疲れた私は思ったがそんなことは今問題ではない)

そして、パチンコ屋のうるさい壁裏で、ソフトクリームをいやというほど食べた。
いやではなく、やはりおいしかった。
母はもちろん、全部は食べられないのだが、驚いたことにそのあたりに屑篭の一つもないのだ。
缶やペットボトルは捨てられる。
母はここを先途と必死でほとんどたべ、残りのコーンは工夫してバッグに押し込んだ。

これでおしまい、ふたりは満足してさらに進んで行きましたトサ。


*******
「リンと聞く短冊もろき風鈴の津軽の音よ風強まりぬ」

「春や春山たたずみてさ緑の土手に光れる津軽の小川」

「弘前の港なりしか桜とふ美しきものあること知りぬ」

爽やかに目覚めた、のに。。

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「向かふべき西国あらまし菩提樹の木下涼しく物理の涯てに」

などと、テレビで壮大な宇宙のドキュメンタリーをみながら、人間のこれまであれこれ想像し、探求してきた果てを危ぶんでしまった。


それから青森の林檎を食べたせいか、十歳の頃過ごした津軽の一年を思い出した。

「リンと聞く短冊もろき風鈴の津軽の音よ風強まりぬ」

「北風が朝の小窓に貼りつきて千の声して轟きうがつ」

「春や春山たたずみてさ緑の土手に光れる津軽の小川」


そのあとは、アリ退治。
指先に命ひとつを潰して、潰して、
台所の悪鬼となった。最後は熱湯を通路と思われるサッシ窓の下にかけた。
蒸気が走って行った。

しかし別の場所から、いつまでも這い出てくる点ほどのコアリ、
彼等は落ちて来る指の脅威も感じないまま、私に殺される。
そしてセロテープをたくさん貼って、出口を塞いだ。

気持がすっかり塞いでしまった。
そこへもうひとつ、気がかりも増えてこれを書くのもやっとだ。

どうしても遭遇する不運を、めげずに乗り越えていこう。
そう叱咤激励するしかない。

またもや、「反省」

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何か考えがすでにあるというわけではない。
とりあえず、やってみよう。
十月号歌誌にて、12首中5首掲載された。
    ******

ふとみると十日も詠まぬ心もて右往左往のこよみの印 (良いつもりだったが、パンチ?に欠ける)

過ぎ去れば戻せぬ時をぼろぼろと価値などなきと知りつつ使ふ (無理と知りつつ抽象歌)

紅つけずしらが隠さず背を伸ばしクリームだけのせめて闊歩す 選出(おばさんっぽすぎると思っていた

日常の歌を詠まむとエッセイのごとく書き継ぐびっしり頁に  選出(受け狙いとも)

忘れ得ぬ日に言霊はきらめくにすべりひゆ見て哀れ忘るる (これは作者推薦だったが)

軽薄に涌き出づる詩句えいままよ胸深く居て書かねば非在 (面白いのではないかと誤解)

友三人あることの地の温さゆえ泣きごと言ひて花比べなど (上の句が酷いかな)

ネット無くつながり無くてヒグラシの真似したくなる調べ独りに 選出(いかにもという感じかな)

このやる気寝足りしゆえか赤き花咲きてあしたもまだまだと言ふ (事実ではあるが、捨て歌)

綺羅綺羅と見ゆるはビタミン剤のせい世界を前に心泡立つ    選出(事実、1句がよかった?)

黄揚羽の母の見つけしからたちを護りたき我れ赤児をはたく   選出(いいかどうかわからない)

母あげは次の日にも来五十ほどやはき葉の上よろばひて産む (卵50個、いかにもという感じ)


というわけでした。全体的に質が悪いですね。
何とか一カ所でも歌会に参加できないものか。

いろいろ理由を付けて結局さぼっているのは、自己決定権がないせいか。
これも言い訳か。

とはいえ、現在は過去よりもましな環境である。
あきらめない、くじけない、あせらない。これは小泉さんの残した善の遺産である。
ギャラリー
  • 遂にここまで来てしまった 2023年より(4)『77歳の夏至まで』~~「憂き世」「思い見る世」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(7、8)『77歳の秋彼岸まで』~~「座学」「混乱中」「日本の記憶」「赤虫王国」
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  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(6)『76歳の夏至まで』〜〜「強制終了」「神との友情」「一網打尽」「対消滅」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(3)『76歳の春彼岸まで』~~ 「終焉の気配」「春の気配ある」「かくりみの気配」
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  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(2)『76歳の春彼岸まで』~~「希望のころ」「核の脅し」
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