木原東子全短歌 続

二〇〇〇年より哀歌集を書く傍ら、二〇〇六年より「国民文学」歌人御供平佶に師事、二〇一一年からは歌人久々湊盈子にも薫陶を受けて、個性的かつ洗練された歌風を目指して作歌するものの、やがて国外に逃れることとなる。 隠身(かくりみ)の大存在の謎を追求する歌風へと変転し、「・・・」とうそぶく。カッコに入れる言葉の発見は難しい。

2012年01月

毎日飽きもせず、一つの窓から外を見る

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この前、ゆずり葉、というタイトルのブログを読んだのだが、翌々日
偶然にも寝室の窓の外に繁っているのが、その木だと教えてもらった。

世代交代を詩的に表現するのによく用いられるゆずり葉だが、
言葉としてしか知らなかったので、この年になって知ったことが嬉しいような気恥ずかしいような。

3メートルはありそうな樹高、20センチ以上もありそうな濃い緑で厚そうな葉が
扇子を広げたようについている。
その葉の柄が、深い強い赤色をしている。けっこう長い。揃っているので印象的な赤だ。

次世代の葉は見えなかった。その姿が現れると古い葉は散るのだろう。

春にはエシャレットというらっきょう似の野菜を食べた。

夏には皇帝ダリアと知り合った。

年末には鉄線花の新種で、冬に白いベル状の花をつけるクレマチスを購入。
その花びらの厚さに驚かされた、たっぷり1ミリもある。固い。はらはらと散る。

そしてゆずり葉。

昨年の今頃は必死の形相で、駆け回っていたっけ。
3月11日の引っ越しをめざして。

いきなり揺れがきて、いきなり視界が黒い怒濤となる。
今回はそんな恐怖からは免れた。
あのとき誰もが、次の瞬間、なにがやってくるのか、思いもせずに生活していたはずだ。

今も、そうして暮らしている。

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*不思議かな房総半島平らなる石器時代の果てなき空はも

*幻と玉の体は消え果てて白骨となりたるしらじらと

晴れのち頭痛

きのうも今日も、冬野菜をいただく。
深ネギはすぽっと土から抜いたまま、両手に余る程。

この泥をどうしよう。
しかし問題は全くなかった。
外側の葉ごとすっとはずすと根っこまで剥けていく。
そこは真っ白だ。
もう二回、枯れかけた葉をすーっとひっぱる。真っ白な、洗う必要もない白ネギとなる。

その白さの無垢なこと。初めて空気に当たり、水を直接に浴びる白。いい匂いがする。

半分程に切り分ける、白と緑に。
根元を泥つきの葉ごと切り落とす。あとは切るだけ。小口切りといこう。

夕べの残りのスープが、退屈して待っていたのを湧かしてやる。
そこへまな板からがらがら落とす。喜んで鍋が受け取る。

緑のはっぱは? これは丁寧に洗うべきだろう。
水では風邪がぶりかえすようなので、ぬるま湯で、、、?

なに、この匂い、臭い、わちゃあ、猫のマーキングだ。
あのチャンピーめ。

外に折れ曲がっていたはずの、つまり猫の被害を受けた筈の
上半分を、残念切り捨てる。
下半分を洗って、くんくんとかいでみる。
よさそうだ。まあ毒じゃなし。

蓋をする前に、卵を二つ割り入れてっと。
暖かいご飯はあるし、、、あれ、思ったよりないぞ。
そうか、うちの大きな鼠の仕業だけど、まあ足りるかな。
どうせ体重を落とせと医者と約束させられてる身だ。

満足満足。暖かい。ひとりで静かにネギを噛む。
香り高く甘い、私を養ってくれるもの。

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朝日が射すまで、雲があったのだが、いきなり
光が攻勢となり、さあーっと明るい世界になったのに

夕焼けまぢかのころ
また厚い雲に空全体が覆われた。

眠気と頭痛、急に襲われる。
少しの睡眠不足があちこちに影響するらしい。
眠るのも若さの特権だなあ。

「日差し得て庭のいのちと過ごししが醜き空となりて頭痛す」

実質二回目の歌会報告

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十人が各3首を提出、全部の無記名の詠草の中から各人五首を選出、採択の理由などを述べる。
先生の講評と添削、ほぼ最終形になるまで頭をしぼってくださる。

その前に、歌集と歌人を抄出された歌のプリントで紹介してもらう。
色々な基本的情報など、これまで聞く機会もなかった。

今回はアララギ派に属する97歳の男性歌人の最新の歌集だった。
作品の象徴性、奥の深さにおいて、高齢まで精進した歌人と俳人では俳句に軍配が上がる由

*以下注意事項の羅列

漢字と仮名のバランス
いつも~小春の空、くっきりと~ゆれいる塔(とりあわせに齟齬がある)

抽象語で強くくくりすぎない(恥の一年 →恥ありし年を)
言葉の斡旋、雰囲気がゆったりするように
逆のことをいうと引き立つ(笑ひいし~逝く)
「逝く」は過去のことであっても現在形で使える

既視感のある題材を使わない
上下の句を名詞でとめると切れたようになるので、どちらかを動詞で(心情が出る)
言わる=受け身として可

星に癒され歩む→ われに輝く(これが自分に引き付けるということなのかしらん)
事柄を並べただけでもうまい、と感じさせることある

野づらに探す→ しゃがんで探す(野づら、大きすぎる)
表現をもってきすぎることなく、単純に表現する

名詞止めはきっぱりする、動詞止めは説明的になる

真実感をそそる虚構、見て来たような嘘/逆に突飛な事実は短歌にならない
境涯詠、報告調

*語彙
朝庭(あさにわ)
出でて(文語)
天上天下(げ)
月代(つきしろ)=月皓(げっぱく)
頽齢(たいれい)
照り翳り
さゆらぎ
かたまく(方まく)=時を待ち設ける~夕方まけて涼しくなりぬ
二十年(はたとせ)
古国(ふるぐに)
暁闇(あけやみ)

*次は私の提出歌の推敲(他の方のは残念ながら書けないので)

「濃き赤の最後の莟開きしが巻き戻しのごと仏桑華閉づ」
            → 巻き戻すごと(たしかに。。。)

「藍色の冬至前後の沈みたる空に夕星(ゆうづつ)頼られている」
       → 中空に夕星ひとつ(この結句が重点だとわかってもらえた)

「大洗海岸の波営々と寄するを人ともの言はず見き」
→大洗の波営々と寄せ来るをもの言はず長くひとと来て見き(人を仮名にする、海岸はなくてもわかる)

頭から震災の歌とみなされて少々困った。全員がそうだった。短歌という短詩の力、誰もが想像を逞しくして人、とは誰かを協議した。被災関係の人々、とも解釈された。
これは作者の私としては夏に亡くなった弟との思い出であったのだが。
その頃は元気だと思っていて、ただ自然の景観に圧倒されて眺めていた。

ここでもそうだが、字余りはけっこう許されているらしい。

先生はなんと私と同年生まれ、早くより短歌を始め、しばらく止めた後開始されたと。
他の出席者は同年輩女性がほとんどで、この歌会で5.6年の歌歴らしい。
なかなか批評眼が養われている。私はまだまだ選んだ理由が言えない。
そういえば、先生の歌の一つをみんなでさんざん批判してしまった。先生頭を抱えて「ダメですかねえ」

しかし、思ったことを言う、根に持たない、のだ!
自分の歌は客観的に見ることが難しいので歌会は重要である、の見本のようだった。
先生の歌を見つけられるか、クイズのように当てようとするが、今回もひとつしか見つけられなかった。
それは内容からして明らかだったからだが。
人の眼はまさに多種多様だ。

また一歩下がる

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ここを訪れて下さるみなさま、
遅まきながら、新年明けましておめでとうございます。
これまでと変わらず本年もどうぞよろしくお願い致します。

少し親孝行の真似事をして、まるで赤ちゃんが一人増えたような大変さでしたが、90歳になる母と「また忘れた」と言い合って笑い合ってお正月を過ごしました。

    **********

それはそれとして、忘れてはならないのが歌誌の結果反省。
先月滑り込みで階段を仮に登ったとたん、またすべり落ちた。


*夏来れば誕生日五人あるものを弟死にたり今年の盆に(予想をしていなかったが合格!)

*恋してた頃夏の旅麦わらの洒落た帽子を風が奪った(洒落ていると思ったがダメ)

*思ひ出は大き水がめ金魚いて祖父と眺めし薄紫よ(これは案の定ダメ。下の歌と読み合わす必要あり)

*その淡きあまりに淡き花色のホテイアオイの薄紫の(読み合わすこと不可能ということでダメ)

*朝すでに積乱雲の貼り付きて倒れ来るかの二次元の空(意見が一致して合格という2件のうちの1)

*窓開けてすべりひゆ見る朝日影天にも地にも甘ゆるごとく(お気に入りだったが甘すぎたのか、ダメ)

*朝顔の絡みしつるをほどくごと机上のケーブル敬して分つ(これも得意満面だったがダメ)

*千本の竹刀の素振り師の曰く時に神様降りて虹色(詠んだ背景が??なのでダメ)

*寝転べば畳の固さ垂直の底の四方は平らかにして(意外にも合格。珍しいテーマかも)

*二人乗りの自転車が来る顔二つ子なり孫なり白昼夢かと(これも意外にも合格。孫歌なのだが)

*幻の油を流したる水面危ふ気もなく小舟滑れる(アイデアで悪くないが、期待はせず、で案の定ダメ)

*畦道の区切る矩形の田の並びふとん敷きたるごとき実りは(よくわからない乍らあるいはと期待していたところ合格)


かなりたくさん詠んでいる。たいていは箸にも棒にもかからないというものだ。
或は単独では意味がとれない、というものだ。
一読してわかる、それが大事なのだろう。

以上でした。(ここ四、五日まったく詠めていない。アイデアも浮かばない。ぶつぶつ。。。)
ギャラリー
  • 遂にここまで来てしまった 2023年より(4)『77歳の夏至まで』~~「憂き世」「思い見る世」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(7、8)『77歳の秋彼岸まで』~~「座学」「混乱中」「日本の記憶」「赤虫王国」
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  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(6)『76歳の夏至まで』〜〜「強制終了」「神との友情」「一網打尽」「対消滅」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(3)『76歳の春彼岸まで』~~ 「終焉の気配」「春の気配ある」「かくりみの気配」
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  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(2)『76歳の春彼岸まで』~~「希望のころ」「核の脅し」
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