「箱根八里」
霧と靄箱根八里に雨降りてひとりの旅は明けもやらずに
仮初めに巡り合ひたる旅宿のひとの言葉のわが核となる
夕光の慰めの手が薄雲を富士にかき寄すたれの描くや
東雲(しののめ)の囀りゆかし花追ひてのちは夕星(ゆうづつ)待ちて寝付かむ
嵐来て見事なるべき花房の夭折のごと藤は崩れつ
抜きん出て悲しみも美も感じたる夭折の子に敢闘賞を
「自然と人間」
かへるでと西洋杉の枝先は園(その)への扉遂に触れ合ふ
年毎に切らるるもなほ楠の葉の頬紅めきて諦めず萌ゆ
遠山の斜面に散れる蜘蛛の子の脚めくショベルカー緑を喰らふ
押す弓手(ゆんで)二の矢たばさみ引く弦は自然(じねん)離るる即ちの音
巨大なる眼をわが持てば宇宙すら水晶体か雪の結晶
「雑念」
起動して多分ダメだと思へども真昼眩しみ言葉待ち居つ
群れながらも上には上を狙ふ性(さが)アイドル担ぐ歓声も性か
苦しんで生まれ苦しみ死なしめるこのいたづらを為せしはたれ
敗戦のあとの全てを生き越してこの顔になほ己れの弱き
要りさうに思へばこそのガラクタに付き合ふ所詮落花の時まで
霧と靄箱根八里に雨降りてひとりの旅は明けもやらずに
仮初めに巡り合ひたる旅宿のひとの言葉のわが核となる
夕光の慰めの手が薄雲を富士にかき寄すたれの描くや
東雲(しののめ)の囀りゆかし花追ひてのちは夕星(ゆうづつ)待ちて寝付かむ
嵐来て見事なるべき花房の夭折のごと藤は崩れつ
抜きん出て悲しみも美も感じたる夭折の子に敢闘賞を
「自然と人間」
かへるでと西洋杉の枝先は園(その)への扉遂に触れ合ふ
年毎に切らるるもなほ楠の葉の頬紅めきて諦めず萌ゆ
遠山の斜面に散れる蜘蛛の子の脚めくショベルカー緑を喰らふ
押す弓手(ゆんで)二の矢たばさみ引く弦は自然(じねん)離るる即ちの音
巨大なる眼をわが持てば宇宙すら水晶体か雪の結晶
「雑念」
起動して多分ダメだと思へども真昼眩しみ言葉待ち居つ
群れながらも上には上を狙ふ性(さが)アイドル担ぐ歓声も性か
苦しんで生まれ苦しみ死なしめるこのいたづらを為せしはたれ
敗戦のあとの全てを生き越してこの顔になほ己れの弱き
要りさうに思へばこそのガラクタに付き合ふ所詮落花の時まで