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   「憶いの数々」

自(じ)が声か胎児の鼓動聴きにしか 迷ひ吹つ切る情只ならず ==妊娠初期に突如オキシトシン噴出

君の腕の甘い茶色の腕時計 似たもの欲しくて買って眺める ==けっこうセンスのある子だった

あやまればすむことならずわがこらをかなしませたるわれをゆるすまじ

弱音吐くメールは一度 まさに手を差し伸べる時逸したる者 ==インフルエンザだったらしい

タオルケット歯ブラシパジャマ 一夜のみ泊まりて遺す君の痕跡 ==最高の時1996年



幾年を音信不通か 日々遠き時の過ぎ行き数ふるを止む

いつまでも点滅するを遠巻きに涙のボタンに触れぬやう居る

悲しみを封印したる歌以外茶々をいれては好事家ムード



苦の声の多き命の時すぎて解き放たるを浄土となむ呼ぶ
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