木原東子全短歌 続

二〇〇〇年より哀歌集を書く傍ら、二〇〇六年より「国民文学」歌人御供平佶に師事、二〇一一年からは歌人久々湊盈子にも薫陶を受けて、個性的かつ洗練された歌風を目指して作歌するものの、やがて国外に逃れることとなる。 隠身(かくりみ)の大存在の謎を追求する歌風へと変転し、「・・・」とうそぶく。カッコに入れる言葉の発見は難しい。

2014年11月

経年不変に 2014年より(26)『69歳の冬至まで』~~ 「あてどなき言葉」「今年の秋」「神無月過ぐ」 

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   「あてどなき言葉」

パン屑をたれか落とせしこの床に 拾ひて思ふヘンゼルなるらむ

垂れてくる髪を左右に止めたれば麗子像のやうになりたる額

意味不明のつちのこ空に見つけたり秋空いつばい伸びて疑問符

侵入され遠慮なく打つ蟻や蚊を 吾も保身に走る大雨




   「今年の秋」

ワイン飲むアセトアルデヒドに毒されて 葡萄の粒に満ちる生命を

咲きかけの百合とつぼみのある一本買はば数日吾が幸ならむ

B B C 天気予報に日本が日々話題なり台風禍続く
 
ジャスミンにひしと絡める朝顔をはずす秋日の過ぎゆく香り




   「神無月過ぐ」

神無月 神の居ぬ間の日の速さ不満はあれど退屈はせず 

ひとつきは孫悟空の乗る雲なるやヒッチハイクしていつそ暦買ふ

露草とヘブンリーブルーは兄弟か 空の涯の色濃きと薄きと


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経年不変に 2014年より(25)『69歳の冬至まで』~~ 「欧州旅行1」「白い本」「祥月命日15年」

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   「欧州旅行1」

長病みの夫には死出の旅なるか追ひ立てられて運命に遭はむ

相剋の已まざる吾とこのをのこ ここに至れば別れえざらむ

青空に水平線なす雲の彩キカイの記憶に変幻委ぬ

シベリアより日本海超え山の国 くねりて細かき畑の色の差



   「白い本」

もの書くと少女ながらに定めたり次第に上達するを信じて

わら半紙綴じて表紙に布を貼り言の葉書きし最初の詩集

母の語る里芋甘藷栗すべて蒸篭にふかして秋の子どもら

命尽き別るる刻限「惜しまるる人たれ」と聞きて60年を経つ



   「祥月命日15年」

巡り来る同じ問ひかけ 隔絶のひと日如何にぞ過ごせしものか

赤銅の皆既月食 けふの心 永き交信ふと終へむとす

経年不変に 2014年より(24)『68歳の秋彼岸まで』~~ 「落ち穂拾い」「長月尽」

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   「落ち穂拾い」

重陽のあとの朝顔色褪めてにらの直線弾けむと白 ==いたるところニラの花

響めきて行軍のごと雨きたる地球の恵み食み尽くしたり

液晶のネットの向かう優し気に溢るることば空なるとても

からころと踊る秒針しぼられて閉ぢるほかなきハイビッカスの秋

鳥よりも速く飛びつつモダーンなる時計ANAにて買はむと焦る

限りある時計の文字の回る間に宇宙膨張 無を侵しゆく




   「長月尽」

秋分の移ろふ気配わづかにてなほ豊かなる緑の国なり

湾岸の倉庫の並びの機能性究まりそびゆ人間倉庫

黒ズボン ホワイトシャツのマッチ棒動く夕べの窓煌々と

降り出して赤坂トンネル天井より生えし葉むらに雫光れり

白鷺も機体の白も日光を全てそのまま返す青空
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ギャラリー
  • 遂にここまで来てしまった 2023年より(4)『77歳の夏至まで』~~「憂き世」「思い見る世」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(7、8)『77歳の秋彼岸まで』~~「座学」「混乱中」「日本の記憶」「赤虫王国」
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  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(6)『76歳の夏至まで』〜〜「強制終了」「神との友情」「一網打尽」「対消滅」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(3)『76歳の春彼岸まで』~~ 「終焉の気配」「春の気配ある」「かくりみの気配」
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  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(2)『76歳の春彼岸まで』~~「希望のころ」「核の脅し」
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