「寒の空」
十七夜の月はいづこに夕影の西空高く大き蒼き目
四十三の君の生日まみえたる清しき額なほここにあり
古稀の日も二割負担ゆえ楽しみに医者巡りなど始まる昨今
いつも青半島の空平穏の同じ景色に風のみ猛し
寒の空オレンジ色の実を見上げ犬に引かれて去る人のあり
冬茜 檸檬と八朔突出す酸しか甘きかここ散歩道
猛き草の刈り取られたる更地よりなりそこねたる竜巻の子立つ
泰然と平野に聳ゆる銀嶺は斜陽に光る須臾の雲なり
明日は雪無音のものの憶はれて仰ぐ宵空半月霞む
「早春」
時経ても冷たき季節あのときの涙凍てつく枕の匂ひ
一坪の土の中より生れ止まず命の光を注がれ止まず
冬庭に子づくりなさむと猫二匹命さらして哀れ必死に
早春賦口づさみつつ土手伝ひ小鳥の刻み菜かたまりて待つ
東国に吹雪もたらす北風の笛吹く房総散歩諦む
ひいふうみいメル友あるが頼りにていつか作らむ媼の家を
「不遇」
腰痛の薬を断つと強気にてまたも眠らぬ夜と戦ふ
全身に何処ともなき不愉快のこれ薬依存ヴァレンタイン過ぐ
よりそひて小川とあぜ道蛇行せる二月の畠に耕人ひとり ==またディーゼル列車に
枯れ色の広ごる遠さ動かざる犬と女の影を含みて
引かれざる白菜株の緑のみ目を引く冬野ひと籠り居む
らふばいに引き止められて知己なれば不遇を託つこの羊年
雪の無き如月超えて老い三たり八方ふさがりいよいよの刻
___
十七夜の月はいづこに夕影の西空高く大き蒼き目
四十三の君の生日まみえたる清しき額なほここにあり
古稀の日も二割負担ゆえ楽しみに医者巡りなど始まる昨今
いつも青半島の空平穏の同じ景色に風のみ猛し
寒の空オレンジ色の実を見上げ犬に引かれて去る人のあり
冬茜 檸檬と八朔突出す酸しか甘きかここ散歩道
猛き草の刈り取られたる更地よりなりそこねたる竜巻の子立つ
泰然と平野に聳ゆる銀嶺は斜陽に光る須臾の雲なり
明日は雪無音のものの憶はれて仰ぐ宵空半月霞む
「早春」
時経ても冷たき季節あのときの涙凍てつく枕の匂ひ
一坪の土の中より生れ止まず命の光を注がれ止まず
冬庭に子づくりなさむと猫二匹命さらして哀れ必死に
早春賦口づさみつつ土手伝ひ小鳥の刻み菜かたまりて待つ
東国に吹雪もたらす北風の笛吹く房総散歩諦む
ひいふうみいメル友あるが頼りにていつか作らむ媼の家を
「不遇」
腰痛の薬を断つと強気にてまたも眠らぬ夜と戦ふ
全身に何処ともなき不愉快のこれ薬依存ヴァレンタイン過ぐ
よりそひて小川とあぜ道蛇行せる二月の畠に耕人ひとり ==またディーゼル列車に
枯れ色の広ごる遠さ動かざる犬と女の影を含みて
引かれざる白菜株の緑のみ目を引く冬野ひと籠り居む
らふばいに引き止められて知己なれば不遇を託つこの羊年
雪の無き如月超えて老い三たり八方ふさがりいよいよの刻
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