「エイチツーオー」
なみなみと芥とどめぬ河口なり触れてもみたき波の裏おもて
新緑の世界と空を住まはせて川面に水は天より地より
液体と知れど海とふ塊の占むる時空に青の迫力
雨つぶとしぶきのみなり透明の傘に包囲さる音と白にて
窓にある爺やの顔はひたと向く畑のナスカキブドウと金魚
金魚さんと布袋葵の丸き腹むかしの夏の浮かぶ水甕
「戦略」
球根のモントプレチア剛けれどカヤに犯され陣地を失ふ
形状の似たるカヤの葉すぐ千切る 根は強靭とて戦略優る
あのカヤめモントプレチアもどきめと詠みて即出づ いざ退治せん
一様に刈り込みたるに早や青くすくすくと伸ぶこれぞカヤなり
盆花と思ひてカヤを茂らせて思へば去年も花少なかり
「文月尽」
ギヤマンを包みて共に運ばれし白詰草ぞ心して踏む
露の草 庭の絶滅危惧種としきりりと碧し共に越し来て
樹の花の香り満たせる山のバス吐息つくごと降ろされ日長
闇につと浮かぶ七色 火と時を制し変化す 爆音のどかに
のうぜんは葉のみとなれり このまえは暁色の蕾なりしが
文月尽むうつと朝日押し寄すも雷光怒号し驟雨に圧さる
雨戸閉め今や遅しと待ち構ふ迷走台風意思あるやなし
「確かならざる」
かく出会ふこれなる生者ひとりまた一人必ず消ゆと思へば
生物の五感が築くこの世こそ共同幻想たしかさもどき
確かさの石橋叩きなりたちを理路美しく進む果てこそ
今ははや他界をリアルとみなすなり偶然必然この本に遭ふ
葛の花眺めつ聴きつ蝉声の海鳴り宇宙背景輻射
妖精の動き思はす量子場も集合すれば確定となる
幸と福持つべき我ら寛恕たる整合性の仕組みあるべし
「十七年」
仏道へ導きくれなむ君なりと十七年前尼僧に言はれし
もう葉月 とまどひをれば文出でく十七年後に如何にせよとて
わが惜しむ亡き子よ何を言ひたきか とつくに輪廻廻り終へしか
死の関を越えて浄土にいます子よ幻想の世を振り返りしか
安命せよ見守りくるる君なると相棒われを諭しくれたり
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なみなみと芥とどめぬ河口なり触れてもみたき波の裏おもて
新緑の世界と空を住まはせて川面に水は天より地より
液体と知れど海とふ塊の占むる時空に青の迫力
雨つぶとしぶきのみなり透明の傘に包囲さる音と白にて
窓にある爺やの顔はひたと向く畑のナスカキブドウと金魚
金魚さんと布袋葵の丸き腹むかしの夏の浮かぶ水甕
「戦略」
球根のモントプレチア剛けれどカヤに犯され陣地を失ふ
形状の似たるカヤの葉すぐ千切る 根は強靭とて戦略優る
あのカヤめモントプレチアもどきめと詠みて即出づ いざ退治せん
一様に刈り込みたるに早や青くすくすくと伸ぶこれぞカヤなり
盆花と思ひてカヤを茂らせて思へば去年も花少なかり
「文月尽」
ギヤマンを包みて共に運ばれし白詰草ぞ心して踏む
露の草 庭の絶滅危惧種としきりりと碧し共に越し来て
樹の花の香り満たせる山のバス吐息つくごと降ろされ日長
闇につと浮かぶ七色 火と時を制し変化す 爆音のどかに
のうぜんは葉のみとなれり このまえは暁色の蕾なりしが
文月尽むうつと朝日押し寄すも雷光怒号し驟雨に圧さる
雨戸閉め今や遅しと待ち構ふ迷走台風意思あるやなし
「確かならざる」
かく出会ふこれなる生者ひとりまた一人必ず消ゆと思へば
生物の五感が築くこの世こそ共同幻想たしかさもどき
確かさの石橋叩きなりたちを理路美しく進む果てこそ
今ははや他界をリアルとみなすなり偶然必然この本に遭ふ
葛の花眺めつ聴きつ蝉声の海鳴り宇宙背景輻射
妖精の動き思はす量子場も集合すれば確定となる
幸と福持つべき我ら寛恕たる整合性の仕組みあるべし
「十七年」
仏道へ導きくれなむ君なりと十七年前尼僧に言はれし
もう葉月 とまどひをれば文出でく十七年後に如何にせよとて
わが惜しむ亡き子よ何を言ひたきか とつくに輪廻廻り終へしか
死の関を越えて浄土にいます子よ幻想の世を振り返りしか
安命せよ見守りくるる君なると相棒われを諭しくれたり
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