「放浪の決意」
弥生なり南風(はえ)に押されて旅支度 おさらば友よ行き先未定
木の陰にいつもの葉先顔を出す 今年は咲くやら赤きチューリップ
丸木より掘り出されたる小ぶりの盆 母の撫でたる跡か光れる
春嵐春雨つづく菜園に緑見えねど蠢きをらむ
春雨をたつぷり吸ひて咲きみつるスノードロップ 今ぞ切り時
実生(みしょう)より育て咲かせて伐り倒す蝋梅の枝(え)の薫香著(し)るし
常世(とこよ)へと母往きませるその骨の薄きを三ひら なほわが旅に
華やげる電子の海の泡沫(うたかた)のうはさ話に鋭きA1の耳
春ゆゑと思はむとして哀しみか不安とも知れず 鴉叫べば
指の痛み自筆苦になりスマホへと流行りの録音 遺す言葉は
「善行」
春一番の花ならんとや思ふらし丈を揃へて三階草群る
下ろしたる雛とお道具ちかぢかと畳の上にて息づき始む
本当に生かして殺すが理屈なら猫の仔抱きあなたを憎む
菜の花と蕗の薹ある冷蔵庫 につと春めくビタミン笑顔
太陽が追ひつくまでは繊月の独り舞台なり 桜待ちつつ
春の花とりどり咲ける屋敷内いかにや前世善行なせしか
「いつまた桜を」
弟の誕生日ゆゑお彼岸の電車乗り継ぎ墓参 初桜
薄墨にゆるむ蕾に染められて円かなるかな彼岸すぎの世
むくつけき貧しき男一人にて花の下行く 心の誘ふか
われも一人 友らに向かひ花の香の有る無し言へどそよ、とぞ風は
平成の最後の花見ならんかも 摂理のままに花弁の落つ
外国の地に山椿根付くやら 友に送ると帽子に集む
耕人のゐる花の下 とき満ちて水田となれば花びら浮くらむ
一人舞ふ太極拳を悲しまず 「桜」公園神と手を取り
神遊び 名なき広場の唯我にて醍醐の桜ならねど嬉し
ぐうるりとスマホかざしてビデオ撮る今年限りの天と花とを
川上の桜散り初めちりぢりに橋の下ゆく遊び遊びて
川の面を染めつつ進む花びらは遊びがてらに文様なしゆく
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弥生なり南風(はえ)に押されて旅支度 おさらば友よ行き先未定
木の陰にいつもの葉先顔を出す 今年は咲くやら赤きチューリップ
丸木より掘り出されたる小ぶりの盆 母の撫でたる跡か光れる
春嵐春雨つづく菜園に緑見えねど蠢きをらむ
春雨をたつぷり吸ひて咲きみつるスノードロップ 今ぞ切り時
実生(みしょう)より育て咲かせて伐り倒す蝋梅の枝(え)の薫香著(し)るし
常世(とこよ)へと母往きませるその骨の薄きを三ひら なほわが旅に
華やげる電子の海の泡沫(うたかた)のうはさ話に鋭きA1の耳
春ゆゑと思はむとして哀しみか不安とも知れず 鴉叫べば
指の痛み自筆苦になりスマホへと流行りの録音 遺す言葉は
「善行」
春一番の花ならんとや思ふらし丈を揃へて三階草群る
下ろしたる雛とお道具ちかぢかと畳の上にて息づき始む
本当に生かして殺すが理屈なら猫の仔抱きあなたを憎む
菜の花と蕗の薹ある冷蔵庫 につと春めくビタミン笑顔
太陽が追ひつくまでは繊月の独り舞台なり 桜待ちつつ
春の花とりどり咲ける屋敷内いかにや前世善行なせしか
「いつまた桜を」
弟の誕生日ゆゑお彼岸の電車乗り継ぎ墓参 初桜
薄墨にゆるむ蕾に染められて円かなるかな彼岸すぎの世
むくつけき貧しき男一人にて花の下行く 心の誘ふか
われも一人 友らに向かひ花の香の有る無し言へどそよ、とぞ風は
平成の最後の花見ならんかも 摂理のままに花弁の落つ
外国の地に山椿根付くやら 友に送ると帽子に集む
耕人のゐる花の下 とき満ちて水田となれば花びら浮くらむ
一人舞ふ太極拳を悲しまず 「桜」公園神と手を取り
神遊び 名なき広場の唯我にて醍醐の桜ならねど嬉し
ぐうるりとスマホかざしてビデオ撮る今年限りの天と花とを
川上の桜散り初めちりぢりに橋の下ゆく遊び遊びて
川の面を染めつつ進む花びらは遊びがてらに文様なしゆく
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