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  「クロマニヨン人の森」

白き房なせる小花のにほひ立つ卯の花ニワトコ ドイツの森にも

短夜の夜うぐひすは寝(しずも)れり 自然の掟果たしたるらし

岩山の壁に囲まれ生れし空 光も雲も捉ふるに疾き

さえづりを命と生くる歌鳥にさそはれ人もオカリナ響かす

水無月の朝日たゆとふ安息日 身の内清(すが)し楽音あるごと

儚きは花の命に非ずしてわたしの華は永久にぞ薫れ

朝十時 青空日曜 楽人はモーツァルト弾く 緑したたり


  「二十年の記憶」

もう後はクズのみと記し座を立ちぬ さうと感じて居たる我やも

20年経つも変はらぬ愛惜の逝きたる子はも いづこに在るらむ

20年を見えざる国に居る君か 竹林の図のときにうごめく


  「記憶の現状」

二つ割りしたる西瓜まだ温い こほりぶつかけ待つ間の汗よ

初体験の「冷麦」「心太」年上の彼に教はる読み方と味

考えるべき何かが行方不明とは不全なる吾のさらなる惨め


  「摂理と意識」

たれであれ可愛 不憫と感じたき 吾の大なる無条件降伏?

深き息して不完全を良しとせよ 神意は完全カエル降るとも?

難聴の耳のうちよりチリチリと微かに微かに美しきもの来る?

夕日さす空気に細かく動くありヒッグス粒子充ちゐるに似て?

死の国と思ひ居たりし不可知なる形而上的質量消失?

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