「嬉し悲し」
笑ふてる魔法の画面孫十歳 天使の人形届きたる朝
心込め二の子の呉れしメッセージ涙止め得ずわが許されて
「晩秋」
鵙啼けば草引く背なに秋なりし ドイツにも聴く似たる旅鳥
去年(こぞ)の秋に書きたる日誌 そのあとに打ち寄せしもの知りて読むなり
冬鳥の番に飛べど夜を耐えて啼く音短し 冬至へ向かふ
黄葉の埋むる山に霧流る ほろろと民の竈の白煙
「日照8時間」
イヴを待つ山のなだりのをちこちに蝋燭のごと金の樹々立つ
身を捨つと主の生(あ)れましし慈悲かなし われらも辿る塗炭の日々を
身巡りの友も遠くに泣く人もわれに礼拝させたまへ 今
我の身に厄災降るやはた人の身に起こるとも鈴を聴くのみ
極月に往く昏き森 月ひとつ夜市の光こころ攫ひぬ
冬至なる人なき帰路をあてやかに八時の鐘鳴る 護られて我
出来事に慈悲の意味づけ為してのち具体の天恵 降ること堅し
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