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  「コロナ周辺」
 
片耳の世界となりてはみ出せり やはり帰国か試しに拝む
 
外界ゆついに予約の届きたり 皮膚を摩擦すブラシと石鹸

批判すらまずは感謝に始むればいずれも無傷 最後も謝して

御詠歌のやうなる歌と自嘲して庭にて遊ぶ犬やら鳥やら

潮風を思ひてめぐるザリーネゆ注がれ嬉し飛沫と日差し 

三昧の文筆生活 あらまほしき取材旅行はコロナの阻む


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   「アップル」
 
聖霊のへその不思議の胡麻粒の 皆して創るヴァーチャルリアリティ

知恵の実を喰みしはあの日 世を統べる薄き小箱にりんご明るむ

三次元に見ゆる仕組みの肉眼にiPhoneカメラ 未だとどかぬ

月光よ 枝葉に覆はれたる闇に黄金散乱 あの辺りらし

新緑の森の天井仰ぎつつ友の窮状心を過ぎる

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  「薫香芳香」
 
無風にて 外へ一歩を踏み出して初めて知るも皐月の薫香
 
薫香の元を辿れば 足元の草刈り跡ゆ立ち昇るとは
 
繊細なるニワトコの花群れ咲きて何にも喩へがたき芳香
 
川風にふと香りくる懐かしきこれは何ぞや 菜の花なりぬ
 
白き花ささやかなるがあふれ咲く皐月の小路 日はまだ高し
 
ちさき朱の垂れて野苺さて如何に 前歯ににほふこれぞそれなり

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無為ゆゑか疾く過ぎたるに五月なほ最後の幾日長々つづく 

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