冬なくて立春となる 大気はも令和三年までもつらむか
大寒に五ミリの霰(あられ)零(こぼ)るるを嬉しと見しも憂ひまじれり
惑星の子らの見あぐる青と白 奇跡の直線カオスならざる
けふ得たる第一の壁共に越えむ 不安それぞれ自由は輝く
「天体」
日本の所有にあらね上弦の浮かぶ姿よ 雲を光らせ
円周を日に1°ずつ往く地球 昼夜の変化傾くが故
日曜は嵐になるとか 公園に太極拳舞ふ天下にひとり
薄日さし氷雨も降れる二月四℃ こころは温しゆるゆる武術
幼なの瞳 清(さや)けき肌え尊きを 何故に空疎にむくつけくなる
「システムならざるはなし」
一首すら浮かばぬ供花 如月の白梅の香は幻に嗅ぐ
一首すら浮かばぬ供花 如月の白梅の香は幻に嗅ぐ
夕間暮れ今年の歌を小夜鳴けり 片耳にして高枝仰ぐ
耳奥の小さき乾き 通信の狂ひの招く目眩と生きる
そうか わが片耳なりと麗しき音を楽しむエンヤの多重音
不可知なる叡智の一なるコロナさん警告くれてサンキューバイバイ
「鴇色の冬」
なだらかに続く葡萄の畝の丘 見わたす全天オレンジ夕雲
冬雲にそろひて針先突き立てて ひそか奏づる新芽のざわめき
鴇色と雲色の縞模様なす夕空全体 そつくり移動す
閏年の如月尽の土曜日は しみじみ過ごさむなどと思ふは
明日弥生まづ想ほへる小薔薇の葉 梔子(くちなし)蕾(つぼ)む 仔犬の視線
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