木原東子全短歌 続

二〇〇〇年より哀歌集を書く傍ら、二〇〇六年より「国民文学」歌人御供平佶に師事、二〇一一年からは歌人久々湊盈子にも薫陶を受けて、個性的かつ洗練された歌風を目指して作歌するものの、やがて国外に逃れることとなる。 隠身(かくりみ)の大存在の謎を追求する歌風へと変転し、「・・・」とうそぶく。カッコに入れる言葉の発見は難しい。

日常生活

一年の大役終えてさて次は 2019年より(7)『74歳の秋彼岸まで』~~ 「よきにはからえ」「夏の子」

イメージ 1

イメージ 2

  「よきにはからえ」

さえづりが命なるらし歌鳥に さそはれ人もオカリナ響かす

水無月の朝日たゆとふ安息日 身の内清し楽音あるごと

儚きは花の命に非ずかな わが永遠の華密かに薫る

死の刻を心待ちにせん ふと思ひ沸きてひとりの花道踏鞴(たたら)

大小の宇宙の組成 空と色 物理の学に意識も解かれむ

ゴミ捨てに出れば極楽北の庭 涼しとおもふサハラの熱に

あま粒を冷や冷や肌に感じつつ窓より逃がす蜘蛛の一匹



  「夏の子」

あさがほの伸びゆく刻を共にして色水作れり倭の子らは

ひまはりを描けば夏が命得て七夕 如雨露 浮き輪にその他

__

一年の大役終えてさて次は 2019年より(6)『73歳の夏至まで』~~ 「クロマニヨン人の森」「二十年の記憶」「記憶の現状」「摂理と意識」

イメージ 1

  「クロマニヨン人の森」

白き房なせる小花のにほひ立つ卯の花ニワトコ ドイツの森にも

短夜の夜うぐひすは寝(しずも)れり 自然の掟果たしたるらし

岩山の壁に囲まれ生れし空 光も雲も捉ふるに疾き

さえづりを命と生くる歌鳥にさそはれ人もオカリナ響かす

水無月の朝日たゆとふ安息日 身の内清(すが)し楽音あるごと

儚きは花の命に非ずしてわたしの華は永久にぞ薫れ

朝十時 青空日曜 楽人はモーツァルト弾く 緑したたり


  「二十年の記憶」

もう後はクズのみと記し座を立ちぬ さうと感じて居たる我やも

20年経つも変はらぬ愛惜の逝きたる子はも いづこに在るらむ

20年を見えざる国に居る君か 竹林の図のときにうごめく


  「記憶の現状」

二つ割りしたる西瓜まだ温い こほりぶつかけ待つ間の汗よ

初体験の「冷麦」「心太」年上の彼に教はる読み方と味

考えるべき何かが行方不明とは不全なる吾のさらなる惨め


  「摂理と意識」

たれであれ可愛 不憫と感じたき 吾の大なる無条件降伏?

深き息して不完全を良しとせよ 神意は完全カエル降るとも?

難聴の耳のうちよりチリチリと微かに微かに美しきもの来る?

夕日さす空気に細かく動くありヒッグス粒子充ちゐるに似て?

死の国と思ひ居たりし不可知なる形而上的質量消失?

・・

一年の大役終えてさて次は 2019年より(5)『73歳の夏至まで』~~ 「香りの記憶」「令和の日本」「この世のコントロール」

イメージ 1

  「香りの記憶」

くちなしの一輪の香にひたされて林檎齧れば混ざり匂ひぬ

少女の手摘みてポッケに持ち歩く 萎れてもかぐくちなしひとつ

「いい匂い」お茶屋たたみ屋カステラ屋 天文館におかっぱの頃



  「令和の日本」

人類の罪かぶりても一心の民とし 真の和へぞ真向かふ

寂しきにあらねど手持ち無沙汰にてお琴など聴く郷愁のごと

未来往く故国の時刻 コチコチと卓に転がるアナログ時計

ビリビリと羽を震はす蜻蛉(とんぼ)さん たくさんお飲みとお尻を水へ



  「この世のコントロール」

目に入る緑光線けふあふれ 見えぬ緑の満ち充つ世界

野ばらよと謳はれたるはこの花か バス停まはり一重の涼しさ

ひっしりと赤実つけむと今はただ小さく咲くなりおぼろなる白

驚きの策の冴え見す「神対応」 きのふもけふも信じるが勝ち

をととひと同じ間違ひくりかえす神意か阿呆かお気に召すまま

自らを律して安堵したき人をコントロール魔と呼ぶらし昨今

_

一年の大役終えてさて次は 2019年より(4)『73歳の夏至まで』~~ 「令和を思う」「早緑のころ」「内界と外界」

イメージ 1


  「令和を思う」

始まるは令和の意味を想ふ日々 漢字二つの組み合はされて

その旨は和平一義ぞ 先の代は災ひ多く憐れ絶えざり

厄ありて平ら成らざり 次の代は民の心の和むことこそ

厄災に叱咤されたる平和ボケ 民の心を結びて白髪



  「早緑のころ」

白波の瀬音はげしき本流に注ぐ支流は静かに澄みぬ

笹舟を落とす水面に無数の輪生れては止まず海までつづく

眼裏(まなうら)にありてほほゑみ浮かび来る 子鴨の行進いとしく哀し

さみどりの絵筆をかろく踊らせて岩山のうた春の音符に

筆先に若葉点点萌えさせて川隠すごと美(は)しや何の木

憶ひ出せぬ丸やか黄(きい)のあの果実 十三夜月見れば食べたし

リラの節みどり日々濃し日々日長 夕べ待つなる夜うぐひすや



  「内界と外界」

三十年平らかならず 意味なしと思へど耐えて残余にぞ賭く

あれと言ひ神よと言ふ間あらばこそ そこは極楽書きつつ今も

花終えて青葉の隧道仰ぐこの輝かしきかも生物なる事

心消し樹のごとく立つ 歌声の主にあるひは目見えむかもと

樹のごとくわが立ちをれば頭上にて黒歌鳥の姿と声冴ゆ

分針がぐいぐい進む掛け時計 留守の間はサボってゐるらし 

__

一年の大役終えてさて次は 2019年より(3)『73歳の春彼岸まで』~~ 「人と人」「お彼岸」「地獄で仏ならぬ 極楽で針の山」

イメージ 1



  「人と人」

広げたる黒羽根映ゆるカハセミの旋回 滑空 二月の高笑

君の夢支へむと我が密かなる送金のこと ここに記しをく

見つめ合ふガラス窓より我を見る女性(にょしょう)の瞳 一期の愛と

巣立ちゆく自由のつばさ 眩しさよ命尽くせよついに羽ばたく

天降れるただぼたん雪 うつし世の失せたる跡に独り佇む



  「お彼岸」

久々に光あふれて最強の手に(いざな)はるヒナギクとして

愛しきは我なり君なり彼らなり 波の一粒 海の全てが

愛しさの波に浸され泣きじゃくる 不思議のままにわかりましたと

春光のどつと来たりて青き花 紫の花われを見つむる



  「地獄で仏ならぬ 極楽で針の山」


まだ足らず 悔改むもどこまでもボス最強となりゆくゲーム

天国の中に唯一トゲトゲし 喚(よ)ばはる声に負けてはならぬ

彼以外愛に満ちたる浄土なり どうしましょうね魂に訊く

目覚むるや言葉となりぬ 法理にて癒すに若(し)くなし はた自らも

_
ギャラリー
  • 遂にここまで来てしまった 2023年より(4)『77歳の夏至まで』~~「憂き世」「思い見る世」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(7、8)『77歳の秋彼岸まで』~~「座学」「混乱中」「日本の記憶」「赤虫王国」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(7、8)『77歳の秋彼岸まで』~~「座学」「混乱中」「日本の記憶」「赤虫王国」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(7、8)『77歳の秋彼岸まで』~~「座学」「混乱中」「日本の記憶」「赤虫王国」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(6)『76歳の夏至まで』〜〜「強制終了」「神との友情」「一網打尽」「対消滅」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(3)『76歳の春彼岸まで』~~ 「終焉の気配」「春の気配ある」「かくりみの気配」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(3)『76歳の春彼岸まで』~~ 「終焉の気配」「春の気配ある」「かくりみの気配」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(2)『76歳の春彼岸まで』~~「希望のころ」「核の脅し」
  • ドイツより地球の風に飛び移る 2022年より(2)『76歳の春彼岸まで』~~「希望のころ」「核の脅し」
最新記事
アーカイブ
カテゴリー
  • ライブドアブログ