「朝昼晩」
時そうそう夢果つるとも信念の一筋の業（わざ） 同志にであふ
妣（はは）たちの美（は）しき形見の布切れと 共に異郷の朝夕過ごす
寝むとしルーティン五つこなしたり 灯りを消すも眼鏡のままに
シューベルト流してくるるラヂヲ良し 耳も頭も聞きたからうと
メロディと響きの伝ふる色かたち 樹々の直線リボン流して
「窓と冬」
珈琲とシリアルサラダ茹で卵 冬の雨粒窓に飾りて
冬時雨つと止みたれど窓外に 風なく鳥も人も時もなし
冬真昼 雲井に浮かぶ丸きもの日輪なるを懐かしと凝（み）る
氷点下の大気を透り光さす 愛と真理のマジックの謂
氷点下の大気を透り光さす 愛と真理のマジックの謂
昨夜ふと見つけたるやや欠けし月 けふ真円にこの窓訪はむ
如月の月はととのひあらはれり 理解こばみて動きややこし
如月の月はととのひあらはれり 理解こばみて動きややこし
「不可知のあなた」
常しへの命なりせば 物の身の絶へ果つるとも失はるなし
極楽の仕事一つを為すわれに給はるる智慧 日々に驚く
人類の頭脳に充つる夢幻たる神話も波動も 楽しくばよし
幸せの小さく短かく笑ふ声 ハコベに注ぐ今この光
オカリナを落とせし時の絶望の響き 今なほもろ手悲しむ
胸つまる宇宙存在の謎の謎 「不可知のあなた」遥けく悲し
「如月尽まで」
残雪の無人の公園ヒタキ啼く 共に思ふか春まもなくと
南より果たして春の風は来て 啓蟄のごと人ら蠢く
好き好きに人の群れ居る公園に 「ひとり太極拳」公開せり
痛む脚休めて居れば 人影が「明日は弥生」と声かけ過ぎぬ
鳥の声未だ少なし カササギの白黒スタイル薄空制す
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